小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

住めば都 ~整形外科病棟~

INDEX|4ページ/37ページ|

次のページ前のページ
 

次の日のお昼過ぎ。
ピンポーン!
ベッドとナースステーションをつなぐチャイムがなった。
「宮村さん、もうすぐ手術室へ行きますから着替えて待っていてください」
と、ナースの声がする。
「はい。でも、点滴の管が付いているのでパジャマが脱げないのですが……」
「大丈夫ですよ。お手伝いしますから」
と優しく言ってくれた。

ほどなく、新人のナースが来て手伝ってくれた。点滴の管や袋を付けたまま上手に脱がせてくれた。新人とはいえ、さすがにプロだと思った。私はこの新人ナースが1日目から好ましく思っていた。
初々しくて、一生懸命さが滲み出ていたから。
裸になって、その上にバスタオル、またその上に毛布を肩まで被って静かに横になった。もうここまでくれば俎板の上の鯉だ。
これからまさしく包丁(メス)を入れられるのだ。

「では、出発しましょう!」
ベッドのストッパーをはずし、ゆっくりと部屋を出た。ナース二人がベッドを押して付いてきてくれる。
部屋を出たときはゆっくりだったのに、廊下になると速い速い。ベッドはどんどん進んでいく。
目を開けて天井を見ていたが、その速度に目が回りそうだったので、しっかり目を閉じた。
ナースステーションの前で一旦停まり、必要なものをベッドに乗せて再び出発。
ベッドごと入るエレバーターには家族が乗れる余裕はなく、他のエレベーターを待つには時間がかかるので、姉と息子の祐太が階段を走って下りてきた。4階から2階までだがすぐに追いついた。
手術棟の前でナースが、
「では、ご家族の方はここまでです。後は、談話室かお部屋でお待ちください」
というなり、すぐにベッドを押して部屋に入ってしまった。
(アレっ? テレビではここで、頑張れよとか言い合いながら、手術室の前まで付いて行くのに、あっさりしてるな……)
姉も、へッ!? ここまでなの? と思ったと後で教えてくれた。家族との別れはあっけなかった。

99%無事で戻れるとわかっているから、今生の別れは必要ないとナースは幾つもの手術の経験を経てわかっていたのかと後で考えた。