住めば都 ~整形外科病棟~
手術室のナースは、
「宮村さんは背中の手術ですから、うつぶせで固定します。胸に負担がかからないようにこういうテープを貼りますが、大丈夫でしょうかね」
と質問を続けた。
「大丈夫だと思います。絆創膏なども時には痒くなるときもありますが……めったにそうはならないですから」
「あ〜、点滴の針もこれで留めているから大丈夫ですね」
と、右手に留めている点滴針を見ながら納得するように言った。
「あと何かご心配なことは?」
「あ、あと金属アレルギーがあります。先生にそのことをお話したら、今度使うのはチタンですから多分大丈夫でしょうと言われたので、心配はしていないのですが……」
一瞬、顔を曇らせたナースは、
「ああ、良かった。もう先生にお話してくださっているんですね。タラ〜と冷や汗が出てしまいましたよ」
こんな大事なこと、手術前日に初めて聞いたとしたら……大慌てになるんだろうか……。
「ほかに心配なことは?」
「大丈夫です。ありません」
「はい、ありがとうございました。目が覚めたときにはすべてが終わっていますからね。
では明日、お待ちしています」
手術前の緊張感を和らげるような話し方であった。
手術室のナースは爽やかな風を残して去って行った。もう逃げて帰ろうかと昨夜から思っていた私の心は少しだけ軽くなった。
それにしても、とても丁寧な説明と聞き取りであった。このナースの人柄か、ここの病院の持ち味なのか……。
作品名:住めば都 ~整形外科病棟~ 作家名:ねむり姫