住めば都 ~整形外科病棟~
この病院に来るまでに、私、宮村里香はペインクリニックで硬膜外神経根ブロック注射という治療を受けていた。注射で痛みを逸らす治療法で、最近やっと一般にも知られるようになってきた治療法だ。
その注射は、あごと膝がくっつくように体を丸めて、脊髄に注射をするのだ。
脊髄だから1歩間違えば危険な注射になる。注射前には何度も何度も腰から背中にかけて広範囲にイソジンを塗って消毒をするのであった。
(この体位、どこかでしたな……あ、そうだ、帝王切開のときだ)
ペインクリニックのベッドに横たわりながら、二十数年前に帝王切開で第三子を産んだ時のことを里香は思い出していた。緊急手術であったので、いい思い出はなかった。
しかし、硬膜外神経根ブロック注射も回を重ねていくと、平気にもなり、注射液が患部に流れ込んでいるのがわかるようにもなっていた。それに伴って、痛みもだんだん和らいできていたのだった。
今までの腰痛は整体での調整だけですっきりと治っていたのに、今回は違っていた。
整骨院・整形外科を何箇所か回っても一向によくならず、最後、藁にもすがる思いでたどり着いたのが、このペインクリニックだった。
そして、患部を特定し詳しく診るためにMRIを撮ったのが後で入院することになった市立の総合病院だったのだ。そう、ここはペインクリニックの先生に紹介されたところだった。
作品名:住めば都 ~整形外科病棟~ 作家名:ねむり姫