住めば都 ~整形外科病棟~
朝食が済んで落ち付いた頃、体を拭いてもらい浴衣からパジャマに着替えた。
このパジャマは猫のイラストの入ったボタンが付いた前開きのパジャマだ。
入院用に買ったパジャマの中でも一番のお気に入りだった。入院手続きの時、前開きのパジャマを用意してくださいと言われたので、わざわざ買い求めたものだ。
もともと前開きは好きではない。だから一枚も持っていなかった。手術をまだ迷っていた頃、もしも入院となったら新しいパジャマが必要だなと思い、1枚買っていたのだった。(この頃から多分手術を希望するだろうなと自分の気持ちの中で予想していたのだろう。)その時に買ったパジャマもTシャツ風のものだった。
入院が決定して、病院からもらった入院用のパンフレットを姉と確認した。そこには前開きのパジャマ2〜3枚と書いてあった。
「え〜、前開きやって。持ってへんわ」
「買わなあかんね」
「前開きって、明らかに『パジャマ〜!!』って思うものが多いよね」
「そんなこともないやろ。探したらあるでしょ」
「あれ〜、シャツも前開きだってよ」
「そんなんどこに売ってるんやろね。シャツだって最近はキャミソールやタンクトップばかりやもん」
「あっ、お母ちゃんなら持ってるかもよ」
「あかん、あかん。サイズが合わへんやん」
「今度、スーパー行った時に見とくわ。あんたは足が痛いんやから、買い物でウロウロせんときや」
と気遣ってくれる姉。
そう言われながらも、入院までの1週間の間に買い物買い物!病院から指示されたものをそろえるだけで随分歩いたし、費用もそれなりに使うことになった。
パジャマは入院患者にとって唯一のお洒落といってもいいと思う。リハビリにも行くのもパジャマかも知れないし……。(そんなことに気を遣う私はヘンかなァ?入院患者やのに……)
作品名:住めば都 ~整形外科病棟~ 作家名:ねむり姫