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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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お竹 勘十郎―おたけかんじゅうろう―

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お竹の器量の良さは、やがて殿様の知るところとなりました。
殿様はお竹を呼ぶと、うわさ以上の娘だといってたいそう気に入り、身の回りの世話をさせるようになりました。
けれど、殿様はそれだけではもの足りず、お竹を側室として迎えようと決めました。
殿様の言いつけにはさからえません。
でも、それは死ぬよりつらいことでした。思いあまったお竹は、城をぬけだし、勘十郎とともによその土地へ行こうと決心しました。

ところが、その夜、お竹が出て行くのを偶然見かけた腰元がいて、不審に思ったその腰元は城内の役人に知らせたのです。
追っ手はすぐさま街中に手配されました。
お竹と勘十郎は、早く町をでようと急いでいました。
人目につかぬよう、通りを避け、海岸沿いを手を取り合って走りました。
もうすぐ町外れ、そこを通り抜ければ……と思うと、心がはやります。
そのとき、ふたりの耳にかすかに人々のざわめきと笛の音が聞こえました。
それが追っ手であることは、すぐわかりました。
振り返ると林の向こうで、たいまつやちょうちんの明かりがちらちらとゆれています。
ふたりは岩陰に身を隠しながら、やっと町外れまでたどり着きました。