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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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お竹 勘十郎―おたけかんじゅうろう―

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昔、上総の国のとある城下のお話です。

町でも指折りの大商人の家に、お竹という娘がいました。
花のように愛らしく優しい娘で、主人はたいそうかわいがり、自慢していました。

ある雨の降る日のことです。
お竹が縫い物の手を休め、ふと外を見ますと、ずぶぬれの若侍が店の前にいるではありませんか。
下駄の鼻緒が切れ、困っているその若侍を気の毒に思ったお竹は、かさをさしかけ、鼻緒をすげる布きれをわたしてやりました。

それ以来、その若侍勘十郎とお竹は親しくなり、時々、ふたりで会うようになりました。
勘十郎とお竹の仲を知った父親は、大変怒りました。
勘十郎は武士でしたが、徒士(かち)というとても身分の低い貧しい侍だったのです。

父親は、家柄も身分も釣り合う大商人の息子と、お竹を結婚させるつもりでしたので、ふたりを引き離すため、行儀見習いという名目で、お竹をむりやりお城へ奉公にあげてしまいました。
お竹はそれでも夜になると隙を見ては、勘十郎に会うため、城を抜け出しました。
ある時は花咲く丘の上で、またあるときはさざ波の寄せる入り江で、人目を忍んで二人は会い続け、きっといつか幸せになれると慰め合うのでした。