小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

月の彼方に

INDEX|2ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

その日の夜、春馬は布団の中で美帆の奏でる旋律を思い出していた。
とても美しいあの音色……早くもう一度聞きたいな。
今の春馬の頭の中には、早く明日を迎えてまたあの平原で美帆と再会することしかなかった。
早く明日になれ……早く明日になれ……布団の中で縮こまりながら念じれば念じるほど、その想いは強くなっていった。
そしてようやく眠りに落ち、春馬は美帆の夢を見た。
美帆と出会ったあの高原で、春馬は美帆の隣に腰掛けながら静かに美帆の演奏に耳を傾けていた。
春馬も、美帆も二人とも一言も喋らず平原には美帆の奏でる旋律だけが響いていた。
その夢の中では美帆は時間を気にして帰ったりしなかった。
春馬が自分の演奏に飽きるまで何度でも旋律を奏でてくれると言ってくれた。
「ありがとう」
そう春馬は口にした。
その途端、眩い光が目に飛び込んできて、彼の視界から美帆の姿を消し去ってしまった。
「うぅ……」
不満気なうめき声を上げながら春馬は目を開いた。
窓から差し込む日差し。
朝が来たのだ。
そしてまた新しい一日が始まる。
しかしながら春馬にとっては、孤独な一日が。
しかしそれも昨日までのこと。
今の春馬には美帆がいた。
再び彼女の旋律を聞くことが出来る、そう考えるだけで春馬は言いようのない力が体の奥から湧いてくるのを感じた。
作品名:月の彼方に 作家名:逢坂愛発