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釣った天使

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俺の仕事は順調だった。まず大手旅行会社の海外旅行広告、新聞全段広告がとれた。これが定期的に入るようになり収入の安定がはかれるだろう。

自信が持てたためか、いい顔をしているのだろう、あちこちでうっとり眺められたり、前に俺の誘いを断った得意先の女の子に交際を迫られたりした。とにかくもてるようになったのだ。カナエの約束は本当だった。

カナエにはテレビのリモコンを渡してある。テレビには興味があるらしく、一日中ずうっと寝ているかテレビを見るかして過しているようだ。俺が帰った時、どうでもいいのか曖昧な感じで「お帰り」と言った。テレビを見ているせいか日本語が上手になっている。体も大きくなった気がした。

約束通りに風呂上がりに、カナエを膝にのせ、撫でてあげた。
「テレビ、いっぱい見たよ」とカナエが言った。
「ほう」俺は女の子のことを考えながら、おざなりな返事をした。
「アナタ、気持ちこもってないぞよ」テレビの影響か、変な言い回しでカナエが言う。
「あっ、ごめん」俺はそう言ってカナエの顔を見た。少しの間に人間っぽい顔になりつつあった。そう言えば体重も増えたようで、重みで膝がしびれ始めている。

俺は気になっていることを聞いた。
「カナエ、食べ物は何もいらないといったよな」
「最初はな、でもテレビ見てると、何か食べたくなるである」
「それで、何食べたんだ」
「プリン、リンゴ、あと何だっけかな」
「ああ、プリンたべちゃったの」
「へへ」

俺は立ち上がった。はずみでカナエがドテッと床に落ちた。
「イタイぞよ」カナエの声を後ろに聞きながら、冷蔵庫を開けてみる。たまに料理をするので、食材は買ってあった。冷蔵庫の中には、漬物や野菜類しか残っていない。

「イタイ、イタイ」カナエは甘えたような声で叫んでいる。
「天使のくせに、とっさに飛べないか」

俺は冷蔵庫の中を見ながら叫んだ。
「そのつもりだった」
カナエがしょぼんとした気配がする。

俺はベッドに戻りながら「肉は生で食ったのか」と聞いた。
「料理番組を見て、ショウガヤキ作った」

俺はあらためてカナエを見た。だんだんと人間ぽくなっているのは顔だけではなかった。鉤のような手足の先が、もう猿の手足ぐらいになっている。背中の羽根は退化してかなり短くなっていた。
「その手で、フライパンを使えるのか」 
「まあな、半分魔法かな」
「食材の買い物が二人分になるのか」
「まあ、そのうちワシが行くである」
俺は、なんだか外国人の変な居候がいるような気分になってきた。

作品名:釣った天使 作家名:伊達梁川