釣った天使
検討
自分のマンションに帰って、じっくり戦利品じゃなく窃盗品を眺めた。多分ヘリウムなんかで浮くのだろうが、小さな風船。その表面に突起がいくつかあった。試しに摘んでみると、ピタッと指が接着されてしまい取れなくなった。引っ張っても伸びるだけで、取れない。悪戦苦闘して結局鋏で突起を切って指が自由になったが、親指と人差指がくっついて丸を描いたままだ。男が言っていたたたりとはこれかなと思ったが、これは化学的なものだしなあと思って、仕事で使っているシンナーを垂らしてみたら、少し動いた。たっぷりとシンナーをかけてやっと指は自由になった。シンナーで指の水分が蒸発して白い指になってしまったが、気にせず糸を調べた。
糸は特別なものらしく、軽く丈夫に出来ていた。魚釣りの糸ほど細くはないので滑らせて指を切ってしまうこともなさそうだ。俺はワクワクしながら、どこへ釣りに行こうかなと思いを巡らした。
数日間上の空で仕事をしながら、そういえば男が言っていた【たたり】もないなあと、ますますご機嫌な日々だった。