茶房 クロッカス その2
時は春。高校二年生になった俺と優子は待ち合わせて花見に行った。
休日の午後の公園は花見客で賑わっていた。
俺たちは、ようやく人のいないスペースを見つけて、優子が持って来たビニールシートを敷いた。
桜の木の根元に敷いたシートのその上に、二人でゴロッと寝っ転がって桜を見上げた。
枝の隙間から陽の光がキラキラと長い筋をなして降り注いでくる。
俺はさりげなく優子に腕枕をしてやった。
優子は俺の腕に頭を載せると、そのまま横向きになり、俺を見つめて微笑んだ。
そんな優子がたまらなく愛しくて、俺はそっと唇を合わせた。
優子はそっと瞳を閉じて、薄ピンクの唇で俺の口づけに応えてくれた。
俺たちの初めてのキッスだった。
その日、公園には黄色や白や紫の可愛い花が咲いていた。
「この花の名前知ってる?」
優子の問いに、
「いや、何て言うの?」
俺は、質問で返した。
「クロッカスって言うのよ。私の大好きな花なの」
「この花の花言葉はね……」
優子は花言葉を俺に教えてくれると、俺にもその言葉を大切にして欲しいと言った。
あの日からクロッカスは二人にとっては特別な花になった。
作品名:茶房 クロッカス その2 作家名:ゆうか♪