小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

茶房 クロッカス その2

INDEX|6ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

「マスター、どうした? ぼぅーっとして」
 小橋さんの声に突然現実に引き戻された。
「あぁ、ちょっと昔のことを思い出しちゃって……アハハ」
 笑ってごまかそうとしたのに、
「えっ何だい? 昔のことって」
 小橋さんは目を輝かせて俺を見ている。
「うーん、それより小橋さん、その彼女とどこまでいったんですか?」
 負けずに水を向けてみた。
 その後の小橋さんの話によると、何度か待ち合わせて一緒に飲んだが、まだその先にはいってないらしい。
「今度機会があったら一緒にうちに来て下さいよ。小橋さんがそんなに気に入ってる人、俺も見てみたいですよー」
「よし、じゃあ楽しみに待っててくれ」
「ところで、その人独身なんですか?」
「いや、なんでも離婚して、娘と二人で暮らしてるらしいよ」
「そうなんですか……」

 そのあと、出勤してきた薫ちゃんも仲間入りして、三人で世間話を少しした。
 小橋さんも薫ちゃんのことは気に入ってくれているようだった。
 ランチタイムに入り、俺が忙しくなったので小橋さんは、「じゃあまた来るよ」そう言って帰って行った。
 やっと忙しい時間帯を過ぎると、今日は久々にお気に入りの一曲をかけてみた。

  紅茶の美味しい喫茶店
  白いお皿にグッバイ バイバイ
  そしてカップにハローの文字が
  お茶を飲むたび行ったり来たり
  できることなら 生まれ変われるなら……

 懐かしい。柏原芳恵の「ハローグッバイ」だ。
 もし本当に生まれ変われるなら、今度こそ俺は、絶対優子を離したりはしないのに……。
 曲を聞く内、俺は過去への扉を開けてしまったようだった。