茶房 クロッカス その2
折りしも季節は梅雨に入ろうとしていた。
梅雨に入って、毎日鬱陶しい雨が降り続き、数日経ったある日、久々に空に晴れ間が広がった。
その日は珍しく、常連の小橋さんが午前中から店に来た。
カラ~ン コロ~ン
「小橋さん、今日は早いですねー」
「うん、昨夜が夜勤だったから今帰りなんだよ。眠いけどマスターのコーヒーが飲みたくなってね」
そう言うと小橋さんは、携帯を取り出しメールを打ち始めた。
「朝から一体誰にメールしてるんですか? 奥さん?」
「えっ? むふふっ」
小橋さんは俺の質問には答えず、何だか意味ありげな含み笑いを漏らした。
「もぅ何なんですか、その意味ありげな、イヤらしい笑い方は?」
俺が拗ねたようにそう言うと、
「マスター、聞きたい?」
そう言ってまた、ぐふふ……と笑った。
「そんな意地の悪い言い方しないで、さっさと話して下さいよー」
口を尖らして俺が言うと、
「ハハハ……分かったよ。ごめん、ごめん」
小橋さんがやっと含み笑いの訳を話してくれた。
作品名:茶房 クロッカス その2 作家名:ゆうか♪