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茶房 クロッカス その2

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 それから数日後の朝のこと。
 いつものように出勤してきた薫ちゃんがいきなり言った。
「マスター、この前の話OKだってぇー」
「えっ? 何が?」
「んっ、もぅー。忘れたのぉー?」
「………?」 
 俺は何のことか分からず、キョトンとして薫ちゃんを見た。
「沙耶のことだよ」
「あっ、そのことか。で、どうだって?」
「もうマスター、私の言うことちゃんと聞いてる??」
「……?」
「だ、か、らぁ、オーケーだって!」
「マジかぁ?」
「まじ、マジ、大マジだよ!」
「良かったー! 本当言うと、薫ちゃんが辞めたらどうしようかと思ってたんだあ」
 俺は、頭を掻きながら照れ笑いをした。
「――あははは……」
「やっぱりねぇ、そうだと思ったんだぁ。うふふふ」
 薫ちゃんは呆れたように俺を見て笑った。

 ちょうど俺たちが笑っている時にドアが開いて、花屋の礼子さんがやってきた。手には可愛い花々を持っている。
「あ、礼子さんお早う! そうか、今日は花の日だったんだね。頼むよっ」
 俺がそう言うと、礼子さんはにっこり笑って言った。
「ええ、もちろんよ。薫ちゃんお早う、悟郎ちゃんに聞いたわよ。結婚するんだってね、おめでとう!」
「ありがとう、礼子さん。それで来月からは、私の親友の沙耶ちゃんて子がここで働くことになったから、宜しくお願いしますねっ」
「あ、そうなの? じゃあ悟郎ちゃん、一人っきりにならなくて済むんだね。良かったじゃない」
 そう言うと礼子さんは「ふふふ」と笑った。

 それから礼子さんは、手早く古くなった花を取り出し、新しく持ってきた花を可愛く生けてくれた。
 それぞれのテーブルの上とカウンターの上、それに、入口のそばにある雑誌を入れた棚の上へと、それらを可愛く配置して、
「それじゃあまたねぇ~」
 そう言うと帰って行った。
 礼子さんが帰ると薫ちゃんが言った。
「ねぇマスター、礼子さんたち夫婦って素敵だよねぇ。私もあんな夫婦になりたいなぁ~」
「うん、二人はホントに仲もいいしねぇ。いいんじゃないかぃ。薫ちゃん、結婚したら子供は何人くらい作るつもりなんだぃ?」
「そうねぇ、やっぱり二人は欲しいかなぁ。男と女と」
「いいなぁ、俺なんか子供の前に相手がなあ……はぁ~~《溜息》」