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茶房 クロッカス その2

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 次の日は土曜日だった。
 土曜日というのは、会社関係は休みの所が多いので、比較的暇な曜日だ。
 前日の二日酔いも手伝って、少しぼぉーっとした頭で店をオープンし、のんびりとランチの用意をしていた。
 そんな所へ京子ちゃんがやって来た。
カラ~ン コロ~ン
 カウベルの音に、店の入口に目をやると京子ちゃんが立っていたが、ドアを開けて入って来た時からその瞳は潤んでいた。

「どうしたんだぃ? 京子ちゃん」
「マスター私……(嗚咽をこらえ)やっぱり彼のこと。忘れられない! やっぱり京平が好きなのぉー!」
 叫ぶようにそう言うと、カウンターに突っ伏して泣き出してしまった。
「京子ちゃん……」〔オロオロ〕
「――京子ちゃん、やっぱりあの後も彼からの連絡はなかったのかぃ?」
 京子ちゃんは言葉にはせず、カウンターに伏せたままで、ただコクッと頷いた。
「そうか……なかったのか……」
 俺は何と言ったらいいのか言葉を探した。
「――京子ちゃん、何があったか知らないけど、そんな、無理して忘れる必要はないんだよ。時が自然に忘れさせてくれるから。それに本当に縁があるならきっとまた再会できるよ! (俺はまだ会えないけど……)」
 最後のところだけは小声で呟いた。
「本当にそう思う?」
 濡れた瞳で救いを求めるように俺を見る彼女に、力強く言い放った。
「もちろんだよ!!」 
 本当は全く自信なんてなかったんだけど……。
「――で、一体何があったんだぃ?」
 俺は、極力優しくそう聞いてみた。
「実はね、会社に阿部さんて人がいるんだけど……」
 時々鼻をすりながら、京子ちゃんが語り始めた。