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茶房 クロッカス その2

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 その後、みんなそれぞれの思いに耽っていたのか……、
「――でも、それでだったんだなぁー、やっと分かったよ」
 しばらくの沈黙の後、小橋さんが妙に間延びした声でそう言った。
「ん?  何が?」と、俺。
「いやさぁ、この前一緒にカラオケを歌った時にさぁ、さりげなく肩を抱いたのさっ、そしたら一瞬だったけど身体を固くしたから『あれっ?』って思ったんだよ。だってそうだろ? あれだけ美人で独身なら、当然それなりに男性との付き合いもあると思うじゃないか。ところが、たかだか肩を抱いただけで身体を固くするなんて、男に慣れてない証拠じゃないか。そうだろ?」
《そんなことを俺に同意を求められてもなぁ……。俺には最近縁のない話だしなぁ》
 そう思いながらも仕方なく、俺は適当に言葉をつないだ。
「はははっ。ま、そんなもんかなぁー、ははははっ」
「そうだよ! そうに決まってるさ。そうか、男に慣れてないのかー。ふふっ」
 またいつものイヤらしい笑いを浮かべて、小橋さんは一人で納得していた。

 夜も十一時を過ぎたので、俺たちは帰ることにした。
「ママ、俺独り者だしさっ、また飲みたくなったら来てもいいかな?」
 帰り際に俺がそう言うと、
「まっ、嬉しいことを言ってくれるじゃない! どうぞどうぞ~、いつでも遠慮なく来てちょうだい。毎日でもいいわよ。うふふ」
 ママは一応嬉しそうに、商売用の笑顔でそう言った。
「ありがとう、じゃあまたね」
 俺たちはそう言って店を出た。
 ママは表まで見送ってくれた。

 小橋さんとの別れ際。
「小橋さん、今日は楽しかったよ。小橋さんの女声最高だねっ」
 俺がそう言うと、
「そうだろう、結構みんなに褒められるんだよ。くっくっくっ」
 小橋さんは嬉しそうに笑った。
 俺は内心《ちょっと違うんじゃないかなぁ、褒めてるのとは……》 
 と思っていたが、それは言葉には出さず、小橋さんの勘違いを容認することにした。
《俺って 懐深いわぁー、むふふふ……》