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茶房 クロッカス その2

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 小橋さんは東北地方の出身だとかで、言葉のイントネーションがちょっとだけ違っていて、以前からちょっとオカマっぽいよな、とは思っていたけど、今日はっきり分かった。
 小橋さんはカラオケで、裏声をフルに駆使して大いに俺たちを笑わせてくれたし、その姿はまるっきり女になりきっていた。
《やっぱり……》 
 一人二役のデュエットは本当におかしかった。〔爆笑の連続〕
 そんな時、何の脈略もなく俺はふと思い出した。

「そう言えば、優子さんという人と会ったというのは、もしかしてこの店なのかぃ?」
「あぁマスター、よく覚えてるじゃない! 彼女の名前」
「だって、俺の昔の彼女の……」
 危うく言いかけて、慌てて口をつぐんだ。
「えっ、昔の彼女がどうしたって?」
「あ、いや、何でもないんだ。それよりどうなんだよ? 優子さんとのその後は?」
「うん、まぁな……」
 それだけ言うと、何やら思い出したようにニャーっと笑った。
「――実は、少し前にもまた一緒に飲んだんだよなぁ、にひひ……」
 と、小橋さんは涎を垂らしそうな顔でにやついた。
「それで?」
「彼女はカクテルが好きで、それをいつもゆっくり飲むんだ。俺は大抵焼酎の水割りなんだけど、その日は結構混んでいて、俺のグラスが空になっているのに、ママが忙しくてなかなかお代わりを作ってくれなくてさぁ。(ママの方を向いて)なぁママ、あの時は全然構ってくれなかったよなぁー」
「あらまぁー! 何を言ってんの? こう見えて、気を利かせてあげたんじゃないの。分かってないのねぇ~。ウフフ」
 食器を洗いながら、ママは意味ありげに微笑み、そして言った。
「――だから、優子がお酒作ってくれたでしょ?」 
「あれっ? じゃあママも、小橋さんと優子さんて人のこと応援してるってことなのかぃ?」
「まぁねぇ、応援ってほどじゃあないけど。――彼女、可哀想なのよ……」
「可哀想って?」
「実はね、優子とは幼馴染みなんだけどねぇ……」
 それからママは、優子さんの結婚前後のいきさつや、現在の状況を話してくれた。