姉、そして妻と娘
「パパ、花火見に行きたいの、連れてって」
真夏の祭典、花火大会の日が迫っている。
舞奈はそれを知っているのか、拓也にねだってきた。
「ああ、いいよ」
拓也は、そんな愛娘(まなむすめ)、舞奈からのリクエストに軽く答えた。
そして、その当日となり、家族三人で仲良く出掛けていった。
どーん、どーん。
夏の夜空は、赤や青の色とりどりの花火が連発で上がり、染め尽くされていく。
「綺麗だね」
拓也は娘の舞奈に声をかけた。すると舞奈が、即座に聞き返してくる。
「パパの小さい時も、こんなに綺麗だった?」
拓也が、「うーん、どうだったかな」と記憶を辿っている。
その様子を見ていた妻の愛沙が、「舞奈、パパは憶えてるかな? ふふふ、どうでしょうね」と、微笑みながら会話に加わってくる。
「ママがあんなこと言ってるよ、ねえ、パパ、そうなの?」
舞奈がさらに確かめてくる。
「うん、そうだなあ、綺麗だったかもな」
拓也はそんな曖昧な返事をした。
そして、「舞奈は可愛いね、パパの宝物だよ」と囁いて、舞奈をぎゅっと抱き締める。
「きゃー、ママ助けて、パパは変なオジサン」
舞奈は幸せそうな笑顔で叫び出す。