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姉、そして妻と娘

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男は人生の中で、一番弱い時に結婚するものなのだろうか。

沈み切っていた拓也は、まるで過去を塗り潰すかのように、愛沙と一緒になった。ある意味では、それは愛沙が拾ってくれたとも言えるのかも知れない。

しかし、姉、葉子との今生の別れの間際に、姉が漏らした短い言葉。
「ねえ拓也、これね、拓也の一番好きな人にあげて」

拓也はその通りにした。
あの二輪の薔薇のブローチ。
「I love you.」と刻まれてある。それを愛沙に贈ったのだ。

「これ、拓也の宝物なのね、いいわ頂くわ、ありがとう」
愛沙は大人っぽく呟いて、あっさりと受け取ってくれた。

こうして妻、愛沙との穏やかな日々が始まった。そして、幸いにも直ぐに娘を授かった。

拓也と愛沙、そして一人娘の舞奈(まいな)。
三人の幸せな暮らしの日々が続いていく。

その後、幾年月の春秋を経て、現在、娘は小学四年生にまで成長した。


作品名:姉、そして妻と娘 作家名:鮎風 遊