姉、そして妻と娘
拓也と愛沙。
そして一人娘の舞奈。
こんな他愛もないやり取りで、この小さな家族は盛り上がり、そして寄り添い合って花火を眺めている。
そんな三人に、天空の花火から放たれてくる目映いばかりの閃光が・・・・・・。
夏の夜空からの輝きが、まるで太陽の下にいるように、明るく照らしていく。
今、この家族三人は幸せだ。
こんな幸せがずっと続いていって欲しい。しかし、拓也は充分知っている。閃光の行き着く先には、必ず影ができるものだと。
拓也はぼんやりと思い出す。「随分前にも、確かこんな光景があったなあ」と。
それは、幼い姉と弟が両親を亡くした悲しみの中で、寄り添い合って見た花火。
拓也はそんな過去の光景を思い出し、本能的に愛沙と舞奈を、何かから守るように自分の方へと引き寄せた。
そんな瞬間のことだった。拓也ははっと気付くのだ。
娘の舞奈の胸元に、あの薔薇のブローチが・・・・・・。