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姉、そして妻と娘

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拓也は初め何のことかわからなかった。
しかし、それを目にして、おぼろげに思い出す。

母が交通事故で亡くなってしまった。その年の夏に、姉と二人で大きな川へ花火を見に行った。

その時、確か姉は・・・・・・胸元にブローチを着けていた。そして拓也はそれが欲しくなった。
そんな拓也に、あの時姉は言った。

「お母さんがね、言ってたの。これ、お父さんからもらったんだって。だから一番好きな人にあげるのよってね」

それは姉の宝物。
そして、一番大切にしてきた大事な物だと、今の拓也は理解できる。

「お姉さん、いいの? だって、お母さんが一番好きな人にあげると言って、お姉さんに渡したんだろ」
拓也はそっと姉に聞いてみた。

「ううん、もういいのよ、拓也。本当はね、お母さんが一番好きだったのは・・・・・・拓也よ。だから、これあげるわ」


作品名:姉、そして妻と娘 作家名:鮎風 遊