姉、そして妻と娘
両親の死。
こんな大きな不幸を背負ってしまった幼い姉と弟。そんな二人が並んで花火を見ている。
花火はこれでもかこれでもかと、夏の闇を光り輝かせていく。
そして大勢の見物の人達はその華やかさに酔い、歓喜の声を上げている。辺り一帯は実に盛り上がっている。
だが、この二人にとっては、こんな夏の祭典も単なる暇つぶしでしかない。ただ二人は寄り添って、ぼんやりと眺めているだけ。
そんな感動のない二人ぼっちの時間が流れていく。
そんな時に、今宵一番の真っ赤な花火が、大音響とともに夏の夜空に大きな輪となって開いた。
その瞬間、闇の中から姉と弟のシルエットを明るく浮き上がらせるのだった。
「ねえ、お姉ちゃん、それ何?」
拓也は、姉の胸元にあるピンク色のブローチを一瞬の光の中で見つけた。
「あっ、これ・・・・・・お母さんからもらったのよ」
葉子は拓也に何気なく答えた。
「なんで?」
拓也は、なぜお母さんなのかがわからない。