姉、そして妻と娘
娘の舞奈の心だけは縛ってやりたくない。
舞奈だけは、もっともっと自由に生きて欲しい。
拓也は強くそう思うのだった。
拓也は舞奈の前でゆっくりと腰を落とし、しゃがんだ。そして、舞奈と目線を合わせる。
「ねえ舞奈、じゃあ聞くよ、だったら舞奈の一番好きな人は・・・・・・誰?」
拓也は舞奈にそう尋ねてみた。
舞奈は、突然にそんなことを聞かれて、どう答えて良いものか迷っている。そんな時に、妻の愛沙が助け船を出してくる。
「舞奈、一番好きな人は、パパでしょ」
舞奈は、最も好きなママ、愛沙にそう強制されてしまったのか、小さな声で呟く。
「パパよ」
「そうか、パパか・・・・・・それじゃそのブローチ、パパに戻してくれない? もっとカッコ良いのを買ってあげるから」
舞奈は、「もっとカッコ良いのを買ってあげる」という提案に心が動かされている。
しばらく考えていたが、「じゃあパパ、これあげる。だけど約束よ、もっとカッコ良いの買ってね」と返してきた。
そして直ぐさま、そのブローチをブラウスから外し、拓也に戻してくれた。