姉、そして妻と娘
それは娘の可愛い白いブラウスに、それとはなしに着けられてある。
拓也は驚いた。
しかし、できるだけ気を落ち着かせ、舞奈に聞いてみる。
「それ、どうしたの?」
「ママからもらったのよ」
舞奈は実に自慢そうに答える。
「ふーん」
拓也は軽くそう返し、しばらく考える。
そんな時に、舞奈ははっきりとした口調で、さらに話してくる。
「ママがね、言ってたの。これ、パパからもらったんだって。だから一番好きな人にあげるのよってね」
拓也は、舞奈が口にしたそのフレーズ、それを聞いて、背筋が異様にぞくぞくっとした。
なぜなら、確かそれは遠い昔、姉の葉子が・・・・・・。
「お母さんがね、言ってたの。これ、お父さんからもらったんだって。だから一番好きな人にあげるのよってね」
姉の葉子は確かそう言っていた。
ママとお母さん。パパとお父さん。言葉の違いはあるが、姉の葉子が、幼い弟の拓也に言ったフレーズとまったく同じだった。
そして、その瞬間に、拓也は紛れもなく見てしまうのだった。
小学四年生の姉の葉子が、そこにいるのを。