カナダの自然に魅せられて ~リスを探して10日間~ (1)
6、ホワイトロックへ
いよいよ船長さんとの約束の時間になった。
ドキドキ・ワクワク…
『会ったときなんて言えばいいんだろう?しまった!!美月に英訳してもらっておけばよかった。最初の挨拶ぐらいは英語で話したいなあ。』
と思ったのも、時、すでに遅し。
昨日から気持ちに余裕なくバタバタと過ごして来たことを反省!反省ばかりの旅行だ!!
豪華客船の船長さんだから、白い帽子に白い制服、パイプを燻らせて…
イヤイヤ、今日はオフなんだからそんな恰好では来ないでしょう。などと想像を楽しんでいた。
程なくして、グレーのワーゲンが私たちの横に停まった。
車から降りて来られた船長さんのいでたちは、短パンにTシャツ、サンダル履きというとてもラフな恰好だった。一気に緊張がほぐれていった。
『あ~良かった!!』
「コンニチワ。ハジメマシテ…」
船長さんは、車から降りて日本式のおじぎで挨拶をしてくれた。日本語だった。よかった!ホッとして、
「こんにちは。美月がお世話になっています。今日はお招きいただきありがとうございました。よろしくお願いします」
と日本語で言った。
でも、日本語の会話はそこまでで、それからは英語になった。やはり、美月の通訳のお世話になることになったのだった。
船長さんと美月が知り合ったのは、美月がまだ神戸で働いていたときであった。
船長さんが神戸港に立ち寄られたときに催された歓迎レセプションの席で出会ったらしい。美月はそのレセプションにスタッフとして参加していたのだった。
美月は母親や私には無愛想なのだが、年上の方たちには、愛想よく話題も豊富でおしゃべりになる娘(こ)だった。だからおじさんにもおばさんにも気に入られることが多かった。
美月はカナダを訪れてから、何度も船長さんのお家にお邪魔をし、奥さんとも仲良くなって泊まったこともあると聞いていた。娘のように可愛がってもらっているのだった。
ちょうど航海を終えて船長さんはお宅に戻っていた。今回、私たちがカナダへ行くことを知って、是非にとお宅に招待してくれたのだった。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~リスを探して10日間~ (1) 作家名:ねむり姫