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茶房 クロッカス  その1

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 昼のランチタイムが終わるとしばらくは、俺もホッと一息つく時間だ。
 遅い昼食をカウンターの片隅で一人で食べる。食後に、お気に入りのフォークを聴きながらコーヒーを飲む。憩いの一時〔ひととき〕だ。
 そんな時ふいに(前もって予告したら怖いが……)、ドアのカウベルが鳴った。
 カラ〜ン コロ〜ン
 振り向くと二人連れの男性客だ。
「いらっしゃ〜い」 
 俺はいつものように明るく言った。
 二人は空いている店内を見回すと「どこにする?」とか話していたが、結局は道路に面したボックス席の一つに、向かい合って座った。
 その席はガラスの壁を透して、表側の花壇に植えたクロッカスが良く見える場所だったから、初めての客はほとんどがそこへ座った。
 俺も一番好きな席だ。もし俺が客なら、やはりそこに座るだろう。
 折りしも表に植えたクロッカスが、白、黄、青、紫など色とりどりに咲き始めている。クロッカスの葉は松葉のように細く、真ん中に白い筋が入るのが特徴だ。今年も綺麗に咲いてくれそうだ。

――いつか彼女も目に留めてくれるだろうか――