茶房 クロッカス その1
その夜俺は、店を閉めたあと俺の店に来た淳ちゃんと礼子さんを前にして、どう切り出したものかまだ迷っていた。
俺が黙っていると淳ちゃんが、
「悟郎さん、今日は何事だぃ? わざわざ呼ぶなんて、初めてだよなー」
と言い、礼子さんは不安げな顔で、黙って俺の言葉を待っている。
「実は今日は、二人にとって大事な話があって来てもらったんだ」
そこまで一気に言って、大きく息を吸い込んだ。
「大事な話って?」
淳ちゃんが応じた。
「実は少し前にあることを相談されたんだ。――二人から――」
「えっ? 二人?」
当の二人は同時にそう言って、驚きを隠さず互いを見つめた。
どちらも、頭の中ではあれこれ思い巡らせているんだろうに、何をどう言えば良いのか分からないというように、目だけがキョロキョロと落ち着きなく動いていた。
「――俺もさぁ、ほとんど同時期に二人から同じことを相談されて――」
「同じことー!?」
二人の声に俺の話は寸断され、二人の先を促す表情に推され、次を続けた。
「――そうなんだよ。さすがの俺も驚いたよ。淳ちゃんから最初に相談された時には――」
「あなたが?」
淳ちゃんにそう言うと、礼子さんは次に俺に向かって、
「それって……、その内容は?」
「――それが、礼子さんが俺に相談したことと全く同じなんだ」
「えぇーっ?!」と二人。
「じゃあ、じゃあ待てよ。礼子が俺と同じことを相談したってことだよなぁー」
「――ということは……」
どうやら淳ちゃんは頭が少々パニくっているらしかった。
「ねぇ悟郎さん、一体どういうことなの? きちんと分かるように説明して!」
礼子さんも興奮気味にそう言った。
「まぁ二人とも落ち着いてくれよ。今ちゃんと説明するから……」
作品名:茶房 クロッカス その1 作家名:ゆうか♪