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茶房 クロッカス  その1

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 それから数日後の午後だった。
 前日ついに意を決して、アルバイト募集中のボップを作ってドアの外の目に付きやすい場所に貼っておいたら、早速一人の応募者がやって来た。
 その娘は変わった娘で、俺が気が付いた時、表からドアのガラス越しに中を覗き込んでいた。
 伝票の整理をしていた俺は、何だか視線を感じてふと顔を上げると、その娘とバッチリ目があった。
《うん? なんだー?》
 しばらく見合ったまま数分間が過ぎ、何だか目を反らした方が負けみたいな変な意地になっていた。敵はなかなかしぶとい。
 ついに根負けして俺は「アッハッハ!!」と大声で笑いながら入口まで行き、思い切りよくドアを開けた。
「そんなとこで何をやってんだぃ? 誰も取って喰ったりしないから、さぁー入った入った」
 そう言うと、彼女も安心したのか、にっこり笑って、
「じゃあお邪魔しま~す」と言って入って来た。
 カウンター席を勧めて俺もカウンターの中に入り、いつもの定位置についた。
「で、何してたの?」
「あぁ、表に募集中の紙があったから……」
「じゃあ入って来れば良かったのに……」
「だってこういう店に来たことないからちょっと心配でぇ……」
 照れくさそうに笑う彼女の顔は可愛かった。
「それで君、接客の経験はあるの?」
「もっちろんですよ! (おおーっ!) ちょっこっとですけど……(ガクッ)」
「……で、どこで?」
「Mバーガーです!」
 ちょっと胸を張って答えた彼女。
「ふぅーん どのくらいいたの?」
「エヘヘ、一週間です」
「はぁー」
 大きく溜息をついて俺は、
「――それだけ?」と念を押すように尋ねたら、彼女はにっこり笑って、
「はいっ!」と元気良く答えた。