小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

茶房 クロッカス  その1

INDEX|22ページ/32ページ|

次のページ前のページ
 


「コーヒーをお願いします。たこ焼きはないでしょうなぁ?」
「たこ焼き……???」
 年の頃は六十前後の、今時珍しく和服姿の男性だった。
 何やら変わった帽子を被り、ふっと俳人の松尾芭蕉を彷彿させる雰囲気を秘めた人だった。
「すみません。たこ焼きはやってないんですが……」
 俺が済まなそうに言うと、
「いやいや、気になさらんで下さい」
 そう言うと、袂から何やら小さい本を取り出し、おもむろに読み始めた。
 俺がカウンターに入ってコーヒーの準備を始めると、紅茶をとっくに飲み干していたおばさんが、ようやく重そうな腰を上げて、
「マスターお愛想」と言った。
 俺が手を止めて代金を受け取り、
「ありがとうございました」と言うと、
「さっきの話内緒だからねっ! 」 
 と、耳打ちするように小さな声で言いながらニヤッと笑った。
 このおばさんのせいで花屋の二人が悩んでいるかと思うと、蹴っ飛ばしてやりたい衝動に駈られたが、ぐっと堪えて「またどうぞ~」と言って送り出した。
 早くこのことを淳ちゃんや礼子さんに知らせてやりたい。
 しかし、店には俺一人だから抜ける訳にはいかない。じれったいなー!
 こんな時にバイトの子でもいれば、ちょこっと出て来れるのに……。
 そして今日の昼のことを思った。
 今日のランチは本当に忙しかった。〔珍しいのだが……〕 
 今日みたいな日は、やはりバイトの子が一人でもいてくれると、非常に助かるんだがなぁ……。いっそバイトを募集するかな。
 可愛い子でも来てくれるといいんだがなぁ。