ザ・ファイナリスト
半月も経っただろうか? その頃私は数日間もヒトと遭わない事がザラになっていた。
そんな時、私はあるヒラメキを感じた。
ファイナルだ。
恐らく日本には私とそいつしか人間が居なくなったのだ。
他の人々は私とその“男”が消し去った事になる。
それぞれの思いと共に……。
燃料を満タンにした私はクルマのノーズを西へ向けた。
高速道路は所々が乗り捨てられた車で溢れていた。
しかし、一車線だけは必ず奇麗に空いていた。
何も飛び出してくる心配の無い道を私は快調に飛ばして行った。
誰かの配慮なのかも知れない……。私はステアリングを握りながら漠然と考えていた。
中京の大きな都市で高速を降りた。
大きなビルの並ぶ街の中心あたりに車を停めると“男”が国産の四.五リッターV8エンジンを搭載する白いセダンのルーフに手を掛けて私を待っていた。
一陣の風が吹き、カラカラに乾ききった新聞ほどの紙屑が私と“男”の間を逃げるように横切っていった。
そいつは少し痩せ気味で、私より十歳程は年配のすこし頭の薄くなった男だった。
黒いスーツとサングラスをつけた男は、どこか映画に出ていた悪役を思い出させた。
「自己紹介でもするかね。おそらくこれが日本で最期の戦いだ」
ふざけているのか、男はなんとなく関西系のイントネーションを持っていた。
「やめておきますよ、歴史に名が残ってもちっとも嬉しくはないでしょう!」
私達は静かに向き合い、戦いの火蓋を切った――。
さすがに相手も歴戦のつわものだった。
一回では勝負はつかなかった。
十五回くらいもあいこになった後で、私はパーで男を叩き落とした。