日出づる国 続編
●犬神
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シロの子イチは落ち着かない気分にあった。山の方が騒がしい。
イチは犬の群れのリーダー犬である。も一度遠吠えを放った。
群れを離れ、山中にある犬塚に向かった。
その前で、まだ解けやらぬ雪の上にうずくまった。
その数刻前、犬塚の重しの石となっていた猿神が、その塚の犬神を呼び出していた。
犬神も猿神も、禍々しいものが近づきつつあるのを感じていた。
森の精霊たちもざわついている。
とぐろを巻いていた蛇神が立ち上がり、空へ伸び上がった。
《西方から、何やら良からぬものがやってくる》
《何が来るのか分からぬか》
地にいる犬神たちは、はるか上方を見やって尋ねた。空は白い雲に覆われている。蛇神は雲を突き抜け、さらに伸び上がった。
《分からぬ。今まで感じたことがない、禍々しいものだ》
《よし、ならばワシが確かめてこよう。必要があればそこで追い払ってしまう。シロとアカはワシの体から離れ、阿仁の民を、守れ!》
シロとアカの霊魂が犬神から分離するのを確かめると、犬神は地を蹴って走り出した。