日出づる国 続編
夜半、夢兎は陽だけを連れて行くつもりで、小屋の前に立った。
陽だけならばシロに乗せて走ることができる。嘉香は歳を取り過ぎているように思われたからだ。
まもなく冬が訪れる。急がねば行く手を雪で塞がれるかもしれないのだ。
おそらくふたりには経験したことのない雪のはずである。
夢兎が小屋に近づこうとしたところで、アカが鼻で遮ってきた。
何かを知らせている。足元をみると鳴子が張られている。
何を用心しているのか
と思いつつまたいで越えて、小屋に入った。
ふたりはよく寝ている。
陽を抱え上げ出口に向かった時、待ち、と嘉香に止められた。
陽の足は紐で、嘉香の足と繋がっていたのである。
「フン、お主の考えてることぐらい分かる。ワレは巫女ぞ」
用意していた籠を背負い、嘉香は表に出た。
「さあ、行こう」
夢兎は嘉香を見て、たじろいだ。昼間の人物とは別人だったからである。
月明かりに照らし出されたその姿は、妖艶でさえあった。
「ムフォフォフォ、なんという顔をしておる。顔に泥炭を付け、髪に灰をまぶし、口には綿を詰め、ばば者の歯を口に挟んでいただけじゃ。世間を欺かねば生きてはいけん。さ、急ごう」