神々と悪魔の宴 ⑥<透明人間>
上手くやれば貴方を殺した憎い相手の心臓を握り潰す事だって出来たでしょうに。やれやれ……」
「何をっ!」
オレはヒトを小馬鹿にしたような態度に腹が立って、拳を振り上げた。
「それではアレは何です?」
死神と名乗る男がステッキで指す方を見ると、冷たそうな床の上でオレが仰向けに寝ていた。
「!」
全てを思い出した。
クスリを飲まされたオレはそのまま床に倒れ、死んだのだ。
そして暫らくはそのまま寝ていたのだがいつの間にか身体を抜け出して街に出たのだ。
「クソォ、あいつら呪い殺してやる! あんた、チョット待っててくれよ。オレを殺したあいつらに仕返しをしないと気が済まないんだ!」
クルリと背を向けて出て行こうとしたオレに男が言った。
「駄目ですよ。貴方にはそれをやる時間はもうありません。貴方はワタクシに会う前にそれを行うべきでした。
二~三日ならここでお待ちしても良い事になっているのですがね。
自分の身体に戻ってきてワタクシに会ったお方は素直に刈り獲られて頂かないと……ホホホ」
男が持っていたステッキを振りかざすと、何処かにボタンでも在ったのか、バチンという音を立てて何かが飛び出た。
鈍く輝く細い三日月型の刃が長く伸びたステッキの先端から直角に生えている。ステッキそのものも二倍くらいの長さに伸びている。
そう、ステッキはあの有名な、死神御用達の大鎌に変形したのだ!
そのまま「ブンッ!」と振るった大鎌はオレの頭上ギリギリを掠めていった。
首を刈られるのかと一瞬だけ身体を固くしたオレは首が繋がっているのを確認して直ぐに気を緩めた。
作品名:神々と悪魔の宴 ⑥<透明人間> 作家名:郷田三郎(G3)