神々と悪魔の宴 ⑥<透明人間>
「やあ、お帰り。意外と早くお戻りですな?」
痩せぎすな男はゾクリとするような暗い表情で微笑んだ。
オレは見つかってしまった焦りで思わず叫んでしまう。
「お前は誰だ!?」
しまった!あいつにはオレは見えていないのだ。
物音に反応して声を出したのに違いない。
「ワタクシですかな?」
不思議なことにその痩せぎすな男はオレの方を真っ直ぐに見ていた。
「死神ですよ。こんなナリをしていますが正真正銘、本物の死神です。ここでこうして貴方の帰りを待っていたのですよ」
オレは声どころか息さえも殺して心の中だけで呟いた。
え? 何をバカな事を! オレは透明人間になったんだ。だからこうして……。
「ドアを通り抜けた?」
男がニヤリと嗤う。
振り返るとドアは閉じたままだった。
「貴方はね、毒殺されたんですよ。試作品の毒薬でね。でもね、かなり良い出来の毒薬でしたよ。一瞬で死ねて、しかも全く苦しくないんだそうです」
「いや、オレは透明人間に……」
「オヤ? 貴方はもしかするとご自分の姿がお見えになれないのでは? ごく稀にそういう方が居られるのですが。じゃあ街中を歩いてもお仲間には逢えなかったのですね? 街を彷徨う幽霊達に……。しかし自分の姿さえも見えないとは……。」
死神と名乗る男は呆れたようにふぅっと息をついた。
「貴方、よっぽど霊感が弱いと見える」そう言って、男は困ったような薄笑いを浮かべて俺を見た。
「しかしね先ほどドアノブを廻した能力(チカラ)はかなりのモノでしたよ。アレほどの能力があれば拳大の石くらいなら造作も無く投げる事も出来たのではないですか?
作品名:神々と悪魔の宴 ⑥<透明人間> 作家名:郷田三郎(G3)