神々と悪魔の宴 ⑥<透明人間>
「イテェ! 誰だァ!?」
散々引っ掻き回して大乱闘になったところで、オレはその場を離れた。
少し離れたところからその光景を眺める。
つまらん。
その気になればオレは暴力団同士、いや国と国とを戦争に巻き込む事だってできるのだ。
正義の味方より、そっちの方が余程面白そうだとニヤニヤしながら乱闘に背を向けて又歩き出す。
待てよ? この身体はいつまで透明で居られるのだろう?
こんなにオイシイ話なんてそうそうあるもんじゃない。
オレはあのクスリをもっと手に入れたいと考えた。
なーに、透明人間にとって、泥棒なんて最も得意とするところだ。
今度はばれて捕まるなんて事はありえない。
鼻歌でも歌いたい気分でオレはあの地下室の前に立った。
先ずはココからだ。
ドアノブを掴んでガチャガチャと廻したが鍵が掛かっているのかびくともしない。
ははあん、鍵を掛けやがったのか。どうせクスリは別の場所から持ってきたんだ。
そう言って後ろを向いてみたが、思い立って今度はドアに体当たりをしてみた。
ガツン、と衝撃が来るのを予想していた身体は肩透かしを食った様に地下室の中にもんどりうって転がり込んだ。
明りも洩れておらず、暗いと思っていた地下室は意外にもぼんやりと灯りがともっていた。
そして部屋の真中に、パリッとしたスーツを着込んだ少し痩せぎすな男がステッキを両手で床に突き、やや足を広げて椅子に腰掛けていた。
作品名:神々と悪魔の宴 ⑥<透明人間> 作家名:郷田三郎(G3)