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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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神々と悪魔の宴 ⑥<透明人間>

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 オレはサイフでも盗んでやろうと泥酔してベンチで眠りこけているオヤジに近づいた。
(こんな時間にベンチで寝ているヤツは泥酔しているに違いない)
 そしてクセになっている前髪をかきあげる動作をしようとして気付いたのだ。

 オレの手が無い!?
 目の前を通り過ぎるはずのオレの右手が無いのだ。

 不思議に思って自分の両手を眺めようとすると……。
 やはり無い。
 両手が目の前にある感覚は確かに有るのだが。
 そして両手はおろか、その下の方に見えるはずのつま先までキレイに見えなくなっている。
 オレは走り出した。
 鏡を探して自分を見るのだ。
 そう言えばこんなに血相を変えて走っているのに誰もオレに気付かない。
 鏡は見つからなかったが、暗くなったショウウィンドウに自分を写してオレは確信した。

 オレは透明人間になったのだ!

 そうか、思い出した。

「オイ、あれを持ってこい」
 連れて行かれた地下室で年嵩の一番偉そうなヤツが言うと、手下が走って何処かに行き、又走って戻ってきた。
「オイ、コレは出来たばかりの新しいクスリだ。お前で試してやるから有難いと思え」
 左右から抱えられたオレは口の中にカプセルを突っ込まれ、鼻を摘まれると口から水を流し込まれてヘンなクスリを飲まされ……。
 そして気がつくと、こうして真夜中の街を歩いていたのだ。