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それぞれの季節

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天使が通り過ぎた夏



二人の会話が途切れたとき。
男は次の言葉を捜しながら、女の胸元に目を走らせていた。
昼下がりの喫茶店は人影もまばらだ。
「マイクで話すときによく『お騒がせして申し訳ありませんが・・・』って言うよね。」
(これで85なのか。着痩せするのかな。)
一方、女の心は二人の間の空間を彷徨っていた。
「あなたと初めて会ってから、もう半年以上にもなるのね。」
(この人、ずいぶん変わったような気がするわ。)
男は自分の話に熱中していた。
「この間、テレビを見てたら『おサガワセ』って言うの。『おサガワセ』って言ってるんだ。ひどいもんだよ。」
(ただ、もう少しウェストが細ければな・・・)
「付き合うようになってからだって、4ヶ月になるわ。」
女はテーブルの上にある男の手を取って、その自分よりも幾分太めの指にストローの紙を巻き付けながら言った。
(でも、優しくなったことは確かね。)

その時、何か光るものが二人の間をすばやく通り過ぎた。

「見て!!天使よ。」
「うん、天使だ。」
「本当にキラキラ光ってるのね・・・」
女はまだ何か言いたそうにしていたが、男は突然立ち上がると、女の手を引いた。
「出よう。映画が見たくなった。」
「STAR WARS でしょう?」
「ああ、それでいい。」

重い彫り物の扉を押すと、真夏の午後の熱気が二人を包んだ。
(やっぱり、好きになっちゃったかな。)
男は、女の横顔を見やった。
女は気付かなかった。

作品名:それぞれの季節 作家名:sirius2014