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　太陽はいつもの様に東の地平線からゆっくりと空を昇り草木や動物に朝をもたらし、地上を隅々まで照らさんと隈無く眺めておりました。
　そして正午の最も輝く場所に移動した時に森の奥で一際煌くティアの姿を見てしまったのです。
　森の中では木々が光を遮り、真上に来ないと地表近くを照らすことは出来ません。
　月の光の中でさえ美しく煌くティアのことですので、太陽の下では磨き抜かれた金剛石でさえ影の様に見えてしまうほどに輝いて見えたのでした。
　これにはお互い気付かぬ筈もありません。
「貴方は誰？　お月様に似てるけど違うのね？　こんなに強い光は見た事も無いもの」とティアが問えば、
「貴女は誰なのだ？　貴女の様に美しい方に私はこれまで出会ったことも無い」と太陽。
　ティアはこれまで自分をこんなに輝かせる光に出逢った事は無く、太陽もこれ程までに光を美しく使うものを知らなかったのです。
　それ故にティアは空を見上げて身じろぎもせず、太陽は自分の仕事も忘れて森を照らし続けたので、危うく森は火事になるところでした。
「ティアと申します」
「私は太陽だ」
　ふたりはようやく自分の名を語ったのみで後は一言も交わせずにその日は分かれたのでした。

　夜の泉に戻ってからティアは寝込んでしまいました。
　何故か胸が高鳴り、何かを考えようとしても思考が定まらず、目眩がするというのです。
　おそらくそれは恋だったのでしょうが、生まれた時より許婚のあったティアにはそのような感情は芽生えた事さえ無かったのでした。
　それ故に両親がどうしたかと尋ねても要領を得ず、姉妹たちの心配も何の役にも立ちませんでした。

　錯乱の中にもぽつりぽつりと語る娘の話により回りの者もどうやらティアが太陽に恋をしたのだという事を理解しました。
　すると今度は皆、別の意味で心配しだしたのです。