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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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神々と悪魔の宴 ⑤<太陽と月と虹の話>

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神々と悪魔の宴 ⑤

<太陽と月と虹の話>

 とある大きな森のまた一段と奥まったところには清らかな水が湧き出る泉がありまして、そこには水の精霊の一族が住んでおりました。
 水の精霊たちは男も女も皆美しい姿をしており、中でもティアという娘は美の女神さえ嫉妬するほどの美しさだったそうです。
 ティアには許婚がおり、その相手は天空高くより泉を青く照らす月でありました。
 古来より水の精霊と月は親しくしており、月の青い光は泉を一層神秘的に煌かせ、そこに映る姿は月のその自尊心を大いに満足させていたのでした。
 そして、月は生まれたばかりのティアを見た途端にいわゆる一目惚れをしてしまい、まだ言葉も喋れぬ娘を花嫁にしたいと水の精霊の長に懇願したのだそうです。
 ティアと月が結婚し、やがて子を設けるようになれば、月は豊かな水で覆われ、地球にも負けない程の生命あふれる星になるとも言われておりました。
 当のティアにしたところで、その運命に疑問を持つ事はありませんでしたし、月の花嫁になれる事を誇りにも思っていたのです。
 あの日が来るまでは……。

 もともと水の精霊達は夜の世界の住人であり、昼間にその姿を現わす事はあまり有りませんでした。
 不躾な太陽の光よりも、冷たく青い月の夜の静けさを愛していたのです。

 けれども、幼き頃より皆の注目を受け多くの精霊たちに祝福されて育ったティアはなかなかに活発な気質を持つ娘に育っていたのでした。
 もちろん森の泉の鏡のような水面は気に入っていましたが、ずっと下流の滝の下、轟と落ちる水飛沫の踊るのを眺めるのをより一層好んだのです。
 そんなティアですから、やがて静かな夜の泉を抜け出して昼間の森を散策するようになり、そして運命の糸に手繰られるようにして出会ってしまったのでした。

 太陽と――。