らくがき
群青
夜明け前の群青の空気
海と空はまだ分かつことなく
ただ深い藍のなかで抱き合っている
胸一杯に吸い込んだ潮の香りを
意味もない雄叫びに代えて解き放つ
波音が突然に騒ぎだす
黒い雲の向こうに
太陽の力が膨れ上がる
やがて来る朝の気配に押されて
目覚めきらぬ鳥達が羽ばたき出す
幾つもの黄金の剣が
雲を突き破り切り裂いてゆく
煌めきを湛え始めた海面が
夜と繋いだ手を離す
急速に満たされる朝陽に
陸風は次第に歩みを緩める
潮の香りが強くなり
ゆっくりと風が頬を撫でる
両腕を高く突き上げて
もう一度大きく息を吸う
私は徐々に走り始める
<群青>2012.07.11