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機械廃棄人壱と半分-二十三夜-

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■ ティエラディア ■



-----重なりすぎると、もう見えなくなる。


一つの鐘が八つ鳴る。一度目から降り出した雨は、まだ止みそうにもなかった。今年の雨は、一度降り出すと全く同じ雨脚のまま長時間降り続く、と気象予報局は結論付けていた。

(…同じ事だよ…)

昨日JIGと話した事で、少しは胸の奥の曇りは取れたが、やはり部屋に帰ってくると暗い思いがこみ上げてくるのが分かる。もう少し前向きになれたらと思うが、今まで積み重ねてしまった時間を崩す事は難しい。
だが、こうやって部屋にいても無駄な事は分かっている。もやもやの対象になっているモノは、今リビングにいる。ベッドから体を勢い良く起こし、少女のいる部屋に向かう。自分を言い聞かせるかのように、足音を立てて向かった。
思えば、少女はその足音を聞くと必ず止ってから、

「五月蠅いわよ」

と睨みつけながら伝えてくる。
廃棄人は目的地に着き、足音を止める。

「…」

じろり廃棄人を睨んで、数秒置いてから少女は口を開いた。

「…五月蠅いわよ…」

胸が熱を持っていくのが分かる。別段廃棄人はマゾではないが、少女の言葉の冷たい音が以前通りで心地よいものだった。何時も通りの一言を伝えて、少女はふいと廃棄人に背中を向ける。その姿に胸が抉られる様な痛みを覚えたが、勇気を振り絞って少女に語りかけた。

「あ、明日、外に出よう」
「…」

直ぐに返答が返って来ない。分かりきっていた事だった為、廃棄人はその痛みを受け止める準備はしていた。実際は想像以上に痛みが激しい。

「…考えておくわ…」

背を向けられたままだったが、了承の返答が届いた。嬉しくて、大きな声が出そうになった。慌てて口を押さえ、冷静さを取り戻してから少女に伝える。

「じゃぁ、明日に」
「…ええ…考えておくわ」

くるりと自分の部屋へ体を向けた瞬間に少女から釘刺された。

「…足音は極力小さくして頂戴ね」

鋭い視線と声であっても、彼からすれば「普段」が戻りつつある合図であって、それは喜ばし事だった。高鳴る心臓の音を隠す為につい、

「分かってる!」

と大きな声を出して返事をしてしまった。案の定、少女は先程よりも怖い表情でこう言い放った。

「足音だけじゃないって前も言ったわよね?」

迫力あるその姿に一歩後ずさり、ごめんなさい、と謝罪を伝えてから力なく自分の部屋へ廃棄人は戻っていった。姿を見送り、ふぅ、と溜息を深く少女は付いた。

「…全く何度言ったら分かるのかしら…」

ぶつぶつ文句を言う。天井を仰いで、ぽつり呟いた。

「あと少しね、がんばらないと…」

視線を再び落とし、少女は持っていた大きな本を黙々と読み進めて行った。