もう一人の私 (Another me.)
いつからこんなにアホメールが流行り出したのだろうか。
「ITだ、情報化社会だと大騒ぎして、その上に、よせば良いのにメールまで発明しちまいやがって、コンチキショー!」
こんなメール攻撃に、サラリーマン生活の自由がどれだけ奪われてしまっていることか。
「未読のまま一括消去できる権利は、サラリーマンには与えられていないのか?」
高見沢はえらく御不満なのだ。
そう、未読メールの山に埋もれて死に体で、すこぶる機嫌が悪い。とは言うものの、高見沢もひ弱な小市民サラリーマン。
「まあ、しかしなあ、メールに逆らって、反逆罪でリストラになってもかなわないしなあ。シャーナイか、一つ一つ開いていくとスッか」と、えらく弱気へと急変心。
ここは、この不景気の中。そう、サラリーマン人生はサバイバルゲーム(生き残りゲーム)の真っ最中。
高見沢の得意技は『妥協』。
ここは早速気を取り直して、『妥協』でメールを読み始める。
「しかし、なんだよこれは、三つも四つも添付を付けやがって、こんな重たい添付じゃパソコンが沈没するぞ。もうエエカゲンにセイ」
こんな誰にも届きそうにもない気弱な遠吠えを、高見沢はそれをそっと・・・・・・
チッチャな声で発するしかない。
作品名:もう一人の私 (Another me.) 作家名:鮎風 遊