もう一人の私 (Another me.)
高見沢は、「二郎、元気か? 新巻鮭着いたよ、Thank you ! ところで二郎は、どこで何をしてるんだ?」とメールを書き、そのアドレスへと発信した。
すると二郎からすぐに返信がある。
「高見沢一郎、俺を誕生させてくれてありがとう、新巻鮭は俺のささやかな感謝の気持ちだよ。今は一郎の上司の花木さんのパソコンに居候しとるよ、花木のオッサンなあ、仕事の合間みては、スケベサイトばっかり見ちょるわ、低俗なやっちゃ!
しかし、こっちも時々御相伴に与ってね、楽しくやってるで。
そっちのリアル・ワールドは不景気でさっぱりだろうが、こっちのアナザー・ワールドは、最近アナザー・ミーの連中が増えてきて、結構オモロイよ、まあ、元気にやってるから安心してくれ」
高見沢は、二郎があの口うるさい上司のパソコン内に居候しているとは驚きだった。だが元気なのを確認して、一安心。
「二郎、元気でなによりだ、それで毎日、何をして生きてるんだよ?」
高見沢は興味もあり、再メールをした。すると返事がすぐに返ってきた。
「最近ネット・ワールドの人口もホント多くなってきてるよ。ビジネスチャンスも一杯なんだよなあ、だけど、俺は今まで果たせなかった夢を追いかけたい。少年の頃からの夢だった画家になりたいんだよ。
これ、わかるだろ、憧れのシャガールのような絵を描きたいんだよ。そして三文画家でも良いから、ネット画壇に打って出ようと思ってる。だから花木さんのとこのパソコンもそろそろお暇(いとま)をして、絵を画くために、放浪の旅に出ようと思ってるんだ。
貧乏でも良い、それでも画家になるために人生やり直したいんだよ。
人生は思うところを生きて・・・・・・自由奔放が一番、そして後は、PPKでのお終いが理想なんだよなあ」
作品名:もう一人の私 (Another me.) 作家名:鮎風 遊