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もう一人の私  (Another me.)

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「しかしなあ、一本八万円じゃなあ、我が高見沢家では、三万円を越える物件については起業申請が要るし、欲しいけど承認は得られないだろうなあ、もう一年辛抱するか」
高見沢はぐっと我慢せざるを得なかった。

そんな思いで悶々としているある日、自宅に宅急便で小包が送られてきた。
そろりと開けてみると、それはまさに、高見沢が狙いをつけていたあの超飛びのドライバー一本だったのだ。

「おっ、誰か俺にプレゼントしてくれたのか、嬉しいなあ」
高見沢は満面の笑みで送り状を見てみる。

「えっ、何だって、高見沢二郎ってか? 二郎がどうして?」
高見沢は狐につままれたような顔で仰天する。

「しかし、購入者は高見沢二郎で、送り主が高見沢二郎になってて・・・・・・それで受取人が、二郎って? これ、どうなってんだよ? これは二郎が二郎のために買ったとしか言いようがないなあ」

高見沢は意味がよくわからない。そのためパソコン内に住む二郎に聞いてみることにした。

「おい二郎、お前宛にドライバー一本送られてきたけど、どういうことなんだよ?」
高見沢がそうパソコンに打ち込むと、すぐに二郎から応答がある。

「そのドライバーは、俺がネットショッピングで注文したやつだよ。最近ネット内のゴルフ場で遊んでいるのだけど、もう10ヤード距離が欲しくってね、これで安定的に、90が切れて85も夢ではないぞ」

こんなことをメールで返してきた。
高見沢は「また奇妙なことを言うヤツだなあ」と思い、打ち返す。

「二郎、お前はパソコン内で生きてるんだろ、要するにアナザー・ワールド(もう一つの世界)のネット住人なんだぜ、そこは実態がない世界なんだよ。こんなんホンマ物のドライバーをパソコン内で使えるわけがないだろうが。

それでも百歩譲り、オマエが注文したとして、その金の出所は、どっからだよ?」