もう一人の私 (Another me.)
高見沢はパソコン内に同人格を持つ『もう一人の私』、その二郎を誕生させ、パソコン内に居住させることに成功した。
そして、二週間の月日が経過しただろうか、高見沢は最近すこぶる気分が良い。
とにかく高見沢二郎は機転が利き、適宜適切に高見沢一郎に代わってメールを発信したり返信したり、そして削除したりと実にうまくやってくれているようだ。特に仕事上での問題は起こっていない。
完璧なのだ!
高見沢は今、社内メールから解放されて、確実に余裕時間が増えた。さらに仕事では、メール処理に費やしていた時間を自由に発想する時間に充て込み、担当プロジェクトで次世代型の提案もできるようになった。
査定も上がり、ボーナスはどっさりと貰えそう・・・・・・かな?
まあ、これは現実には起こらないとして、何よりも嬉しいのは、余裕で遊びの時間が増えたこと。
その遊びの中でも、高見沢にとってはなんと言っても、やっぱりゴルフ。集中力も増し、スコアもコンスタントに90が切れるようになってきた。サラリーマンゴルフにしては、まことに上出来だ。
「ヨシ、この調子なら安定的に85も夢ではないぞ、ドライバーの距離があと10ヤード伸びればなあ。これの達成のためには、やっぱりゴルフは道具が一番大事だよな。
あ~あ、ニューバージョンの超飛びのドライバーが一本欲しいなあ」
こんな欲が高見沢に膨らんできた。
作品名:もう一人の私 (Another me.) 作家名:鮎風 遊