嘆きの運命
散々泣いた挙句、ようやく少しだけ冷静さを取り戻した岩沢は、それからやっと110番に電話したのだった。
間もなくやって来て、現場検証を終えた刑事の1人が言うには、どうやら金目の物を目当ての強盗殺人だったらしい。
犯人は最初に2階の窓から侵入し、学の首を絞めて殺し、次に階下へ降りて物色中に祥子と出会い、揉みあった末に首を絞め、止め〔とどめ〕に包丁で刺して逃げた。
警察の見解はどうやらそういうことのようだった。
学と祥子の首についていた青紫のワッカは、その時の首を絞められた跡らしい。
「なんて酷いことをしやがるんだっ!!」
「それにしても、なぜうちなんだ?!」
「何も恨まれるような事してないのに、なぜうちなんだよー!!」
岩沢は、叫び出したいのを必死の思いで堪え、その後も警察の人が調査するのを黙って見ていた。
その後何がどうなったのか、何をどうしたのか、自分の記憶がどこかへ行ってしまったように、いつの間にか葬儀も終わり岩沢は気が付くと、居間のソファにひとりで座っていた。
夫婦揃って両親は数年前に亡くなっていたし、お互い兄弟姉妹もいない一人っ子だったので、弔問に訪れる人も少なく、寂しい葬式だった。
会社には1週間の忌引休みを届けてあったので、岩沢は失意の内にその日を過ごした。
ところが、2人が亡くなったその日から、毎夜、夢にうなされるようになった。
声がするのだ。
祥子と学の声が…。