嘆きの運命
岩沢は意味不明な声を上げながら、腰をついたまま後ずさりした。
立ちたくても立ち上がれないのだった。
「だ、だ、誰かーー!!」
自分では声を出してるつもりでも、実際にはほとんど掠れて声になってなかった。
一体誰がこんなことを……?
混乱する頭の中に、あることが突然よぎった。
「んん? 学はどうした? どこにいる?」
そう思うと、抜けていたはずの腰もどこへやら、ふっと立ち上がると、2階へと続く階段に向かって歩き始めた。
2階の学の部屋の前まで来ると、不安な思いに駆られながらも、一応声を掛けてみた。
「学! 学、いるのか? 学?」
そのままドアを開ければ良さそうなものなのに、その時の心情としては、開ける前に学の声を聞けたら安心できる。
そんな思いが先行していたのだろう。
しかし、その思いはみごとに裏切られ、中からの学の返事はないまま、部屋はシーンとしていた。
思い切ってドアを開けた岩沢の目には、ベッドの上で仰向けになって横になっている、学の身体が見えた。
「まなぶー!」
もつれそうになる足を引きずって駆け寄り声を掛けた。
「学! おい学、目を開けろ! 一体何があったんだ?! 学! おいっ、目を開けないかっ」
しかし、いくら岩沢が呼んでも叫んでも学は決して目を開くことはなかった。
学の首には、祥子と同じように青紫のワッカがついていた。
岩沢は学の頭を抱き締めて泣き出した。