嘆きの運命
「あなた、どうしてこんなことに……。もっと優しくして欲しかったのに……。私はいつかきっと、あなたが『祥子、お前の作る料理は、本当にどれも美味しいなぁ〜』そう言って笑い掛けてくれる日が来る。そう信じて待っていたのに…あなたは私に、にっこり笑い掛けてくれたことなど、結婚してからは一度もなかったもの」
そう言って最後には、しくしくと泣く声が延々と続くのだった。
学も同様に、岩沢の身体に縋り付き言うのだ。
「お父さん、僕、もっとお父さんに遊んで欲しかったよぅ! 勉強だって見てもらいたかったし、もっと優しく抱きしめて欲しかったよぅ〜」
そして、そのあとには決まってオイオイと泣き出すのだった。
連日連夜、2人が夢に現れてはこうして泣くものだから、さすがの鬼岩も大いに反省し、夢の中で2人に約束をした。
「もし今度生まれ変わって、また家族になれたら、その時はきっと2人を大切にするから…」と。
家族を失った悔しさと、これまで夫らしいことも、父親らしいことも大してしてこなかったことへの反省もあってか、岩沢の言葉に嘘はなかった。
その証拠に、目覚めた時の彼の枕は、それまでほとんど泣いたことなどない、彼の涙でぐっしょりと濡れていた。
そしてその次の日だった。
奇妙なことが起きたのは…。