嘆きの運命
家の前まで来た岩沢は、なぜか自分のうちの玄関がやけに暗く見えて不安になった。
「おかしいぞっ、何を怖気づいてるんだ!?」
「いや、俺が恐れることなんて何もないじゃないかっ」
思わず自問自答していた。
よく見ると、玄関の外灯が今日に限って点いてなかった。
「なぁーんだ、そのせいか……」
どうやら祥子がつけ忘れたのだろう、そう思って玄関のチャイムを鳴らした。
いつもならすぐに、祥子の声が「おかえりなさい」と響いて、鍵がガチャリと開くのに、いつまで待っても声もしなければ、ドアも開かない。
訝しがりつつも、かばんの奥の方にしまった鍵を取り出して、ドアを開けた。
予想はしていたものの、家の中も真っ暗だった。
「祥子、祥子いないのかっ、祥子ーー!!」
岩沢は大声で怒鳴りながら靴を脱ぎ、廊下を歩いてリビングへと向かった。
そして、誰もいないリビングから隣の和室を覗いた時、真っ暗な部屋の中でかすかな光に照らされて、不自然な情景が目に止まった。
「んん?」
和室の中央には長方形の客用のテーブルが置いてあり、その横には誰かの人影らしきものが、奇妙な形で横たわっているのだ。
よく見るとそれは祥子のようだった。
「祥子、寝てるのか?」
彼はそばまで行って、慌てて腰を抜かした。
街燈の灯りが、障子を通してうっすら入りおぼろな光と変わる。
その光の中に、祥子はその胸に銀色の刃を立てて横たわっていた。
その刃はおぼろな光を反射して、祥子の白い横顔のように冷たく光っている。
そして祥子の首には、誰に絞められたのか、青紫色のワッカ状の痕が付いていた。
「ヒィィィィーーー!!」