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嘆きの運命

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自宅の玄関が見える所まで来て、岩沢はおやっと思った。
玄関の外灯が明るく灯っている。
少しだけホッとすると、近づいて、そっとチャイムを押してみた。

待つほどもなく、中から祥子の声がした。
「あなた〜? お帰りなさい」
ドアが開いて、祥子が顔を覗かせた瞬間、岩沢は自分でも信じられない行動に出た。
「祥子!」と、呼び掛けるや否や、いきなり持っていたバッグも放り出して、祥子を抱き締めたのだ。

驚いたのは祥子の方だ。
「あ、あなた、一体どうしたの?」

(こんなこと新婚時代でさえもなかったことだわ)と、目を丸くしながらも、一方では喜びの感情が身体の奥底から沸々と沸き上がってくるのを感じていた。

数分間の抱擁の後、岩沢は妻に言った。

「祥子、これからは俺、優しい夫になるから…。どうか、今までのことは許してくれ」
「あなた…、許すだなんて…。私、嬉しい!あなたからそんな言葉が聞けるなんて……」

祥子は、指先で目頭をそっと押さえると
「さぁ、中へ入りましょ、あなた。学が、あなたが帰るのを待つと言って、お腹が空いてるのにご飯食べないで我慢してるんですよ!さぁ早く〜」

「そうか、学が……」(生きているんだ!)という言葉だけはどうにか飲みこんで、祥子に促されるまま、岩沢は玄関に入り、靴を脱いで部屋に上がった。

居間に入ると、その背中を向けて学が、ひとりでテレビを見ていた。

「学…」

岩沢は、大きな声を出すと学が消えてしまうような気がして、囁くような声で学を呼んだ。

父親の声に振り向いた学が
「あっ、お父さんお帰りっ。待ってたんだよ! 早くご飯食べようよ」と言った。

岩沢は息子に駆け寄ると、ひしと抱き締めた。

「学ぅー!」
「お父さん、どうしたの? 嬉しいけど、少し苦しいよぅ」
作品名:嘆きの運命 作家名:ゆうか♪