嘆きの運命
「運命の神…?」
突然自分のことを神だと名乗る、どう見てもホームレスにしか見えないじいさんが現れたって、そう簡単に信じる者はいないだろう。
岩沢とて同じこと。
普段でも神様などというモノなど全く信じていない彼にとっては、益々怪しい人物としか思えなかった。
しかし、さっきの不思議な体験もあるので、ここはもう少し様子を見るか……と、そう思った。
「お前、まだわしを疑っておるな? わしにはお前の考えていることなど、スッキリ、ハッキリ、クッキリ見えておるわ。ハッハッハ! まぁ良い。さて、ここで本題じゃが、わしが何故お前の前に姿を見せたか分かるか?」
「……?」
岩沢は、はて?という風に顔を傾げただけで何も言わなかった。
「まぁわからんのも無理はない。わしはなっ…」
そこまで言うと、そのじいさんは急に背筋をピンとして、杖を一突きトンッ! と突くと
「わしはな、お前の運命を握っておるのじゃ!お前だけじゃないぞ。お前の女房も子供もじゃ。どうじゃ!!」
神だと名乗るじいさんは、威張ってそう言うとぐぐっと胸を反らせた。
「へぇ〜運命を握っているのか……。で、その運命の神さまが俺に何の用なんだ?」
「おおー、ようやくその質問に至ったか…、それを待っておったんじゃ!」
「……と言うと?」岩沢は先を促した。
「お前、夢の中で女房、子供に約束したじゃろうが…」
「約束って?」
「まさか、忘れたとは言わせんぞ!生まれ変わったら大切にすると言ったじゃろうが」